マスクブランクス

マスクブランクスは「フォトマスクの元になる、回路パターンを描く前の基板」です。合成石英ガラスの基板に、光を遮る膜とレジスト膜を形成したもので、半導体のフォトリソグラフィで使うフォトマスクの出発材料になります。

マスクブランクスは、回路パターンの原版であるフォトマスクの土台であり、フォトリソグラフィーに欠かせません。

フォトリソグラフィーとマスクブランクス
フォトリソグラフィーとマスクブランクス

フォトリソグラフィーでは、フォトマスクを通した光でウェーハに回路を転写します。マスクブランクスに電子ビームでパターン(回路)を描画し、現像・エッチングを行うと、フォトマスクが完成します。そのため、ブランクスの品質が、フォトマスク、ひいてはウェーハ上の回路の品質を左右します。

マスクブランクスに求められる品質

マスクブランクスに求められる品質
マスクブランクスに求められる品質
  • 無欠陥・異物無し

    マスクの欠陥は、露光のたびに、ウェーハ上のすべてのチップに転写されてしまいます。ブランクスにピンホールや異物があると、フォトマスクの不良に直結するため、極めて少ない欠陥数が求められます。

  • 光学特性の精度

    膜の透過率・反射率・位相のずれが、設計値からわずかでもずれると、転写される寸法が変わってしまいます。膜の厚さと均一性を、ナノメートル単位で制御する必要があります。

  • 基板の平坦度

    基板が平坦でないと、パターンの位置ずれや、露光時のピンぼけが起きてしまいます。微細化が進むほど、基板の平坦度への要求が厳しくなります。

マスクブランクスの構造

マスクブランクスは、基板の上に、機能の異なる薄膜を重ねた構造をしています。

マスクブランクスの層構成
マスクブランクスの層構成
  • 基板(合成石英ガラス)

    土台となる、透明で平坦な合成石英ガラスの板。紫外光(KrF・ArFなど)をよく通し、温度による膨張も小さいため、マスクの基板に適しています。

  • 遮光膜・位相シフト膜

    基板の上に成膜した、光を遮る、または光の位相を変える薄膜。クロム(Cr)系やモリブデンシリサイド(MoSi)系の材料が代表的で、スパッタリングで成膜します。エッチングで加工され、マスクのパターンになります。

  • レジスト膜

    電子ビームで描画するための、感光性樹脂の薄膜。レジスト塗布済みのブランクスとして出荷されることも多く、描画・現像で、レジストのパターンが形成されます。

上記は光を透過させる「透過型(KrF・ArF用)」の構造です。最先端のEUV(極端紫外線)露光用では、光がガラスを透過しないため「反射型」の全く異なる構造(Mo/Si多層反射膜やタンタル系吸収体など)が使われます。

マスクブランクスの種類

露光に使う光の種類に応じて、主に次の3種類が使い分けられます。

マスクブランクスの主な種類
マスクブランクスの主な種類
  • バイナリブランクス

    石英基板の上に、クロム系の遮光膜をつけた、最も基本的なブランクス。光を通す部分と遮る部分の2値でパターンを作り、比較的、線幅の大きな工程に使われます。

  • 位相シフトブランクス(ハーフトーン)

    遮光膜の代わりに、光を少し通し、位相を反転させる膜(MoSi系など)をつけたブランクス。透過した光が、隣の光と打ち消し合い、パターンの輪郭がシャープになります。ArF露光など、微細な工程で広く使われます。

  • EUVブランクス

    波長13.5nmの極端紫外光(EUV)に対応した、反射型のブランクス。EUV光はほとんどの物質に吸収されるため、光を透過させず、反射させて使います。低熱膨張ガラス基板の上に、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)を交互に積んだ多層膜(反射膜)と、保護層、光を吸収する膜(吸収体)を形成します。

マスクブランクスの製造工程

一般的なブランクスの製造の流れは、次のとおりです。

マスクブランクスの製造の流れ
マスクブランクスの製造の流れ
  • 合成石英ガラスの製造

    原料ガスを高温で反応させ、不純物の極めて少ない合成石英ガラスのインゴットを作る。気泡や脈理(屈折率のむら)が少ない、均質なガラスが必要です。

  • 切断・研削

    インゴットを板状に切り出し、外形と厚さを所定の寸法に整える。

  • 研磨

    基板の表面を、極めて平坦な鏡面に仕上げる。傷や凹凸を、ナノメートル以下のレベルまで抑えます。

  • 洗浄・検査

    微粒子や汚れを洗い流し、平坦度や表面の欠陥を検査する。

  • 成膜

    スパッタリングで、遮光膜・位相シフト膜(EUVでは多層膜・吸収体)を形成する。膜厚・組成・応力を制御し、光学特性と平坦度を確保します。

  • レジスト塗布

    膜の上にレジストを均一に塗布し、ベークして乾燥させる。

  • 欠陥検査・出荷

    ピンホール・異物などの欠陥や、膜の特性を検査する。検査に合格したブランクスが、フォトマスクメーカーへ出荷されます。

フォトマスクの製造工程

出荷されたブランクスは、フォトマスクメーカーで、次の工程を経て、フォトマスクになります。

マスクブランクスからフォトマスクができるまでの流れ
マスクブランクスからフォトマスクができるまでの流れ
  • 描画

    電子ビームで、レジストに回路パターンを描く。

  • 現像

    露光した部分のレジストを現像液で処理し、レジストのパターンを作る。

  • エッチング

    レジストのパターンをマスクとして、遮光膜・位相シフト膜をエッチングする。

  • レジスト剥離・洗浄

    不要になったレジストを剥がし、洗浄する。

  • 検査・修正

    パターンの寸法や欠陥を検査し、欠陥があれば修正する。

  • ペリクル貼付

    パターン面に異物が付かないよう、枠付きの薄い透明膜(ペリクル)をパターン面から少し離して貼る。

ブランクスのサイズ

フォトマスク用のブランクスは、標準的な大きさが決まっています。

マスクブランクスのサイズ
マスクブランクスのサイズ

半導体用のフォトマスクで最も広く使われているのは、6025基板と呼ばれる標準サイズです。一辺が6インチ(約152mm)の正方形で、厚さは0.25インチ(6.35mm)あり、EUVブランクスにも同じ外形寸法が使われます。

円形で薄いウェーハとは異なり、マスクは角形の厚い板です。露光装置にセットして使うため、変形しにくい厚みのある基板が採用されています。

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